日本繁殖生物学会 講演要旨集
第108回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-29
会議情報

卵・受精
受精前後のマウス卵細胞質における脂肪滴の動態観察
*塚本 智史原 太一南 直治郎佐藤 健
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
脂肪滴はリン脂質の一重層からなる特殊な膜と中心部にトリグリセロールやコレステロールエステルなどの中性脂肪を蓄えた構造体であり,ほとんどすべての細胞に観察される。近年の研究から,脂肪滴は余分な中性脂肪を蓄えるだけの不活性な構造体ではなく,脂質代謝や細胞内シグナリングなど多様な生理機能を持つオルガネラとして認識されるようになっている。一方,ほ乳動物の卵細胞における脂肪滴の存在も古くから知られているが,その生理学的意義の多くは不明である。 そこで,まず生体内における脂肪滴の動態を正確に観察するために,脂肪滴の膜上に局在するタンパク質(ADRP)に緑色蛍光タンパク質(GFP)を融合したタンパク質(GFP-ADRP)を卵細胞を含めた全身の組織で発現するトランスジェニックマウス(GFP-ADRPマウス)を作成した。このトランスジェニックマウスは正常な繁殖性を持ち,調べたすべての組織や臓器において予想通りGFP-ADRPを発現していることが分かった。次に,卵細胞質の脂肪滴の局在を観察するために,GFP-ADRPマウスにホルモン投与によって過排卵誘起を行い未受精卵(MII-oocyte)を採取した。さらに体外受精によって受精後の発生段階における脂肪滴の動態観察を蛍光顕微鏡を用いて行った。 観察の結果,受精前の脂肪滴は細胞質中に大きな塊となって集積しているが,受精直後には細胞質全体に分散することが明らかになった。また,発生に伴って脂肪滴のサイズや量が変化することも分かった。 以上の結果から,マウスの卵細胞質中の脂肪滴は卵子形成や成熟過程で集積し,受精によって分散(分解)されることが予想される。現在,脂肪滴の蓄積や分解に関わると考えられる分子メカニズムとの関連性を解析している。
著者関連情報
© 2015 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top