日本繁殖生物学会 講演要旨集
第108回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-30
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卵・受精
Hanging Drop法を用いた体外成熟単培養系におけるマウス卵母細胞へのネオニコチノイド類暴露影響解析
*猪股 大貢原 健士朗種村 健太郎
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抄録
【目的】ネオニコチノイド類は,主に殺虫剤として用いられ,昆虫のニコチン性アセチルコリン受容体に結合することで効果を発揮する。アセチルコリンは,哺乳類でも神経伝達物質として作用しているため,動物,特に家畜への影響も懸念される。これまでネオニコチノイド系殺虫剤を低濃度で単独使用した場合には毒性が低いとされていたが,近年,その中枢神経影響が危惧されている。また生殖細胞や次世代への影響として,精巣発達遅延,精子発生不全,精子の質的低下,卵巣形態異常の誘発等が知られている。そこで本研究では,ネオニコチノイド類が哺乳類の雌性生殖細胞系列へ及ぼす影響を明らかにすることを目的として,マウス卵成熟過程へ与える影響について検討した。【材料と方法】未成熟ICR雌マウスから卵巣を摘出し,卵丘細胞-卵母細胞複合体 (COC)を採取した。COCは,Waymouths MB752/1を基礎培地とした培養液で,18時間,体外成熟培養 (IVM)を行った。IVMは,96wellテラサキプレートを用い,懸垂した培養液の微小滴 (10μl/well)で単培養するHanging Drop法で行った。ネオニコチノイド類の中で主要な化合物であるアセタミプリド (ACE)とイミダクロプリド (IMI)を用いた。ACEとIMIは,DMSO (最終濃度0.1%未満)に溶解後,培地へ添加し,使用濃度は0, 10, 30, 100, 300 ppmとした。培養18時間後,第一極体放出の有無により卵成熟率を算出した。その後,2%PFA固定し,anti-α-tubulin抗体を用い,免疫蛍光染色に供した。核染色はHoechst 33342を用い,共焦点レーザー顕微鏡で観察した。【結果】卵成熟率は,ACE, IMIともに濃度依存的に低下した。免疫蛍光染色像から,ACE 100 ppm, 300 ppm暴露区で紡錘体形成異常が見られたが,IMI暴露区では観察されなかった。IVMにおける卵母細胞へのアセタミプリド暴露影響として紡錘体形成異常を誘発することが明らかになり,アセタミプリドに雌性生殖細胞毒性があることが示唆された。現在,体外培養系においてマウス初期胚発生過程へのネオニコチノイド類暴露影響を検討中である。
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© 2015 日本繁殖生物学会
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