日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-8
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精巣・精子
Oligotricheマウスにおける不妊原因遺伝子の同定
沖津 優丸山 神也江場 稜将伊藤 千鶴年森 清隆藤井 渉*与語 圭一郎
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抄録

【目的】Oligotriche(olt)マウスは,劣性遺伝により鼠径部の脱毛と精子形成不全による雄性不妊を引き起こす変異マウスである。近年,その変異部位が同定され,9番染色体の234 kbの欠失であることが判明した。この領域には,6つの遺伝子(CtdsplVillPlcd1Dlec1Acaa1bSlc22a14)が存在することが分かっているが,すでにPlcd1およびAcaa1b-KOマウスの生殖能は正常であることが報告されている。一方,我々はSlc22a14遺伝子の欠損により雄の生殖能が著しく低下することを見出したが,その表現型はoltマウスとは異なっていた。今回我々は,Dlec1をoltマウスの不妊原因遺伝子として同定したので報告する。【結果】Slc22a14CtdsplVillDlec1の発現をRT-PCRで解析したところ,Slc22a14のほか,Dlec1も精巣において生殖細胞特異的に発現しており,精子分化に伴って発現が上昇することが分かった。そこで,Dlec1の欠損マウスを作製し,交配実験により生殖能を調べたところ,Dlec1-KO雄マウスは完全な不妊であることが判明した。組織学的解析の結果,KOマウスは精子形成不全を起こしており,精巣上体に精子はほとんど存在していなかった。精子分化過程を詳しく見てみると,伸長精子細胞Step10以降の段階において鞭毛の伸長不全および頭部の形態異常が起きていることが分かった。これらの表現型はoltマウスの表現型とよく一致していた。次に,頭部や鞭毛の形態形成に関わるチューブリンの免疫染色を行ったところ,Dlec1-KO精子ではマンシェット構造に異常が生じていることが分かった。この異常は,微小管モータータンパクのひとつであるKIF3A欠損マウス精子の異常と類似していた。以上より,oltマウスにおける雄性不妊の原因はDlec1遺伝子の欠損であることが示された。また,Dlec1は微小管上の輸送に関わっている可能性が示唆された。

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