日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-10
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卵・受精
始原生殖細胞の運命決定におけるOvol遺伝子群の機能解析
*内藤 優希永松 剛浜崎 伸彦林 誠篠塚 裕子小林 悟林 克彦
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抄録

卵子及び精子の起源である始原生殖細胞(PGCs)は胚発生の初期に運命決定する。マウスなどの哺乳類のPGCsは着床後の多能性細胞から誘導される一方,ショウジョウバエやゼブラフィッシュなどは卵細胞中の生殖質を取り込んだ細胞がPGCsとしての運命決定をうける。本研究では,PGCsの運命決定において様式の異なる動物種間で共通する分子メカニズムを探索するために,ショウジョウバエの生殖細胞分化に関わるOvo遺伝子のマウスホモログであるOvol遺伝子のマウスPGCsの運命決定における役割を解析した。Ovol遺伝子群は,Ovol1,Ovol2a,Ovol2b,Ovol2c,Ovol3からなり,Ovol2a~2cは同一の遺伝子座にコードされるアイソフォームである。まず,ES細胞(ESCs)からPGCsへの体外分化誘導系を用いてOvol遺伝子群の発現パターンを解析した結果,PGC形成過程の各分化段階においてOvol遺伝子群がそれぞれ異なる発現パターンを示すことが明らかになった。次にこれらの遺伝子群を欠損したESCsを用いてPGCsの誘導効率を解析したところ,誘導開始2日目及び4日目の時点でOvol2KO,Ovol3KO,Ovol1,2,3トリプルノックアウト(TKO)のクローンにおいてPGC誘導効率が減少していた。さらに,上記のTKOクローンに各遺伝子及びアイソフォームを導入したレスキュークローンを作製し,同様の解析を行ったところ,各アイソフォームの組み合わせにより異なったPGCsへの分化能をもつことが明らかになった。これらのことからPGCsの分化におけるマウスのOvol遺伝子群のクロストークの存在が示唆された。ショウジョウバエのOvo遺伝子ではアイソフォームであるOvo-AとOvo-Bの間での相互作用が知られており,マウスのOvol遺伝子でも同様の相互作用をもつ可能性が示唆された。現在はこれらのクローンを用いて,マウスOvol遺伝子間の相互作用を詳細に解析している。

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© 2016 日本繁殖生物学会
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