日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-11
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卵・受精
卵母細胞は大きな細胞質のために染色体分配異常を起こしやすい
*京極 博久北島 智也
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抄録

[目的]卵母細胞の第一減数分裂では,染色体分配異常が起こりやすいことが知られている。卵母細胞では,細胞質が体細胞の100倍以上と非常に大きいという特徴を持っている。本研究では,この非常に大きい細胞質が染色体分配異常を引き起こしやすい原因ではないかと考え,ライブイメージングと顕微操作技術を組み合わせて明らかにすることを目的とした。[方法]本研究ではマウス卵母細胞を用いた。まず,顕微操作により細胞質量を半分に減らした卵母細胞と細胞質量を2倍にした卵母細胞を作成した。これらの卵母細胞において,染色体,微小管集合中心,動原体をライブイメージングによって観察し解析を行った。[結果および考察]ライブイメージング解析により主に2つの結果を得た。1つ目は,細胞質によって紡錘体の大きさがスケーリングされていること。大きなサイズにスケーリングされた大きな紡錘体は,不安定であり染色体の赤道面への整列異常を引き起こすことが明らかとなった。2つ目は,紡錘体形成チェックポイントの厳密性が細胞質の大きさに依存して低くなること。これにより,大きな細胞質を持つ卵母細胞では,整列に失敗した染色体があったとしても,分裂後期への進行が阻害されなくいことが明らかとなった。これらの結果により,大きな細胞質によって紡錘体自体が不安定になり,染色体分配異常を防ぐ機構も弱くなることが,卵母細胞が染色体分配異常を引き起こしやすい原因であると考えられる。

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