日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-25
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臨床・応用技術
乳用種経産牛の発情時における腟鏡と粘液採取による粘液異常の診断と受胎性の検討
*石山 大前多 敬一郎
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抄録

近年,乳用種経産牛における受胎率の低下が問題となっている。経産牛における低受胎の要因には子宮内膜炎,子宮頸管炎,尿腟など,腟検査により推測可能な疾病も多い。よって,受胎率の向上のためには,発情時の腟検査により腟内粘液の異常を的確に診断し授精の可否を判断することが重要である。腟検査には腟鏡が多く用いられているが,腟内の粘液採取し目視化で直接評価するVaginal Mucus Character(VMC)の有用性も指摘されている。そこで,乳用種経産牛の発情時における腟内粘液異常の実態を腟鏡および粘液採取により診断し,その受胎性を検討した。【材料および方法】2015年9月から2016年6月の間に千葉県北東部および茨城県南西部で人工授精依頼と受精卵移植希望のあった34農場の乳用種経産牛336頭(延べ556回)の発情の診断に腟鏡検査,腟内粘液採取によるVMCの評価,直腸検査を行った。尿腟は貯留の程度(軽度,中度,重度),VMCは粘液無しおよび透明粘液をスコア0,やや白みがかった粘液をスコア1´,10%までの膿を粘液に認めたものをスコア1,50%までの膿を粘液に認めたものをスコア2,50%以上の膿または出血を粘液に認めたものをスコア3として評価した。結果尿腟の診断率は腟鏡と腟内粘液採取を併用した場合は12.8%(軽度8.5%,中度2.5%,重度1.8%),腟鏡のみにより診断した場合は6.1%であった。VMCは腟鏡と腟内粘液採取を併用した場合は28.6%(スコア1: 12.2%,スコア2: 5.6%,スコア3: 10.7%)がスコア1以上であったのに対し,腟鏡のみにより診断した白色粘液は20.9%であった。【考察】腟鏡と腟内粘液採取を組み合わせて腟検査を行うことで,尿腟またはVMCスコア1以上を36.2%発見し,経産牛の発情時における粘液異常は多いことが分かった。また,粘液異常を有していた牛は受胎性が悪かったことからも,粘液採取を併用した腟検査の実施し授精の可否をより慎重に検討する必要性が示唆された。

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© 2016 日本繁殖生物学会
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