日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-34
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卵巣
ウシ黄体退行における testosterone の役割
*入江 結唯羽柴 一久木村 康二奥田 潔
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抄録

【目的】雌ウシならびにヤギにおいて黄体退行時に血中testosterone(T)濃度が一時的に上昇する。また,ヤギへのT合成阻害剤投与によってTの血中の濃度上昇を抑制すると,黄体の寿命が延長することから,Tは黄体退行に関与すると考えられている。このようにTが黄体退行に関与することが示唆されているが,そのメカニズムは明らかではない。本研究では,ウシ黄体退行機構を解明することを目的とし,発情周期を通じた黄体組織におけるTの受容体であるandrogen receptor (AR) mRNA発現の変化ならびに中期および後期黄体細胞の機能に及ぼすTの影響について検討した。【方法】食肉センターより採取した卵巣を肉眼的所見により排卵日を0日として,初期(Days 2–3),形成期(Days 5–6),中期(Days 8–12),後期(Days 15–17)および退行期(Days 19–21)に分類した。その後,各周期の黄体組織におけるAR mRNA発現量を定量的RT-PCR法により検討した。また,中期および後期黄体から単離した黄体細胞を一晩培養後,T(10,100および1000 pg/ml)を添加し,24および48時間後の上清中progesterone(P4)濃度をenzyme immunoassay(EIA)により,細胞生存率をMTT assayにより測定した。【結果および考察】発情周期を通じた黄体組織におけるAR mRNA発現量は,初期および形成期と比較して後期において有意に高かった(P<0.05)。中期および後期黄体細胞における24および48時間培養上清中P4濃度においてTの影響は認められなかった。また,中期黄体細胞における細胞生存率は,いずれの培養時間においてもTの影響は認められなかった。一方,後期黄体細胞における細胞生存率は,24時間培養した実験区ではTによる影響は認められなかったが,48時間において無添加区と比較して,T添加区(100および1000 pg/ml)において有意に減少した(P<0.05)。本研究より,黄体退行時に上昇する血中Tは後期黄体に作用し黄体細胞の生存性を減少させることが明らかとなり,Tが構造的黄体退行に関与する可能性が示された。

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© 2016 日本繁殖生物学会
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