【目的】体内の環境と異なり,体外培養はプラスチックシャーレ等,硬い基質で行われるが,我々は先の大会において,アクリルアミドゲル(PAG)を培養基質に用いることで,ブタ初期胞状卵胞(EAFs)由来の卵子顆粒層細胞複合体(OGCs)の発育促進,球状様構造の維持,顆粒層細胞数の増加が促進されることを報告した。またこれに合わせて体外発育卵子の発生能力向上も報告した。そこでこのPAGが顆粒層細胞に与える影響を,次世代シーケンサーを用いてRNAseqを行い検討した。【材料及び方法】食肉センター由来ブタ卵巣のEAFs(0.5–0.7 mm)からOGCsを採取し実験に供した。PAGを96wellプレートの底に敷いたもの(PAG区)とゲル無し(Control区)の試験区を設定し,14日間個別にOGCsを培養した。培養後の合計100個のOGCsから顆粒層細胞を回収しRNAseqに用いた。得られたデータはIPA Upstream Regulator(UR)解析に供した。【結果】遺伝子発現解析の結果を用いたUR解析ではActivation z- scoreが2.00<および−2.00>であった因子が11個同定された。この中には先の解析で体内に比べて体外で発現低下した因子であるIRF7が含まれ,PAG上では発現が亢進し体内に近づく結果となっていた。また,同定された11個の因子に関連する遺伝子79個について,体内での卵胞発育と体外でのOGCs発育間で,逆の発現様式を示すものを選び,さらにPAG上での培養で発現様式が体内に近づく遺伝子を選抜し,23個同定した。この遺伝子のプロモーター領域に結合する転写因子をGene Cards®にて調べたところ61個を同定し,それらの上位にはFOS, JUN, JUNBなどの柔らかい基質上で発現亢進が報告されている因子が含まれていた。これらのことからPAGはその柔らかさを介して顆粒層細胞に働きかけ,これが顆粒層細胞の増殖性や卵胞の発育に関与していることが示唆された。