日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-7
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精巣・精子
TF-Fe3+がマウスの造精機能および精子機能に及ぼす影響
*久田 尚人久尾 俊輔島田 昌之山下 泰尚
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抄録

【目的】Transferrin(TF)はFe3+と複合体を形成し,血中を介して末梢組織にFe3+を供給する担体タンパク質である。我々は卵胞発育期に卵胞内に蓄積するTF-Fe3+が顆粒層細胞の増殖,卵胞膜におけるCYP11A1やCYP17A1や顆粒層細胞のCYP19A1活性化を介してアンドロゲン(T4)とエストロゲン産生に関与しうることを報告した。精巣においても卵巣と同様にCYP11A1やCYP17A1によりアンドロゲン(T4)が産生され,それが精子幹細胞増殖や精子形成に重要であることから,精巣においてもTF-Fe3+が重要であると示唆された。本研究では,低鉄モデルマウスを作成し造精機能および精子機能に及ぼす影響を検討した。【方法】3週で離乳させたC57BL/6オスマウスを低鉄飼料(鉄含有量0.001%未満)で飼育した鉄欠乏モデルマウス(LF)を作出した。対照区には通常飼料で同期間飼育したマウスを使用した。Tf mRNAが発現することが知られる肝臓をポジティブコントロールとして対照区の精巣におけるTf発現を比較した。また対照区の精巣におけるTfr1発現,TFR1局在を検出した。さらに対照区とLFを用いてFe3+濃度,Cyp17a1発現量,精巣T4濃度,精巣内景,精巣上体精子奇形率および精子濃度,体内受精能を比較した。【結果】対照区の精巣におけるTf発現はポジティブコントロールの肝臓と比較し低値を示した一方,Tfr1は高発現しており,TFR1はライディッヒ細胞に局在していた。LFのFe3+濃度,Cyp17a1発現およびT4濃度は対照区と比べ有意に低下した。LFの精巣形態は対照区と同等で正常であり,精粗細胞,精母細胞,精子細胞,精子数は変化しなかった。回収直後のLFの精巣上体由来精子の奇形率は対照区に比べて有意に増加した一方,精子濃度とATP量,体内受精能は有意に低下した。以上の結果から,TF-Fe3+は精巣におけるT4濃度および精子運動を担保し,その欠乏は雄性不妊の一因になると考えられた。

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