日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-8
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精巣・精子
セルトリバルブ細胞の機能と分子基盤
*貴志 かさね内田 あや長澤 佳也井後 雅博羽入田 知美三浦 健人鈴木 仁美高瀬 比菜子金井 正美九郎丸 正道金井 克晃
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抄録

【目的】哺乳類の精巣では,曲精細管で産生された精子は管腔内を運ばれ,直精細管・精巣網・精巣輸出管を通り,精巣上体で貯蔵される。精細管の基部である直精細管領域には,細胞質を精巣網側へと突出させ弁様の構造をした特殊なセルトリ細胞が存在する。我々はこれをセルトリバルブと呼び,この構造に着目して研究を進めている。セルトリバルブには未分化精原細胞が集積し,精原幹細胞ニッチ因子であるGDNFが高発現しており,哺乳類における固定的精原幹細胞ニッチとしての可能性を示唆している(第106回本大会,Aiyama et al., 2015)。その後,セルトリバルブの特性を解析する中で,セルトリバルブの形成には精巣内における,精巣網/セルトリバルブ/曲精細管という位置関係が,更には精巣網からセルトリバルブへのシグナルが,重要であることが示唆された(第107回,108回本大会)。今回の発表では,セルトリバルブ構造の破壊によるセルトリバルブの機能解明及び,セルトリバルブ領域と精巣網・曲精細管の遺伝子発現の比較解析による分子基盤の解明に関して検討したい。【方法と結果】当研究室で作出したAMH-TRECKマウス(毒素投与によりセルトリ細胞を特異的に除去可能,Shinomura et al., 2014)を用い,セルトリバルブ領域局所的に毒素を投与し,セルトリバルブ構造を破壊した。一ヶ月後の観察において,セルトリバルブが破壊された精細管では,円形精子細胞,伸長型精子細胞の管腔内への脱落を含む精子発生異常が観察された。また遺伝子発現解析には,生殖細胞の影響を除外するため,生殖細胞を欠損するW/Wvマウスの精巣を用い,精巣網,セルトリバルブ,曲精細管の領域でそれぞれRNAを抽出し,マイクロアレイを行った。網羅的な遺伝子発現解析により,セルトリバルブ特異的に発現の高い因子を同定した。

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© 2016 日本繁殖生物学会
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