主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第111回日本繁殖生物学会大会
開催地: 信州大学繊維学部
開催日: 2018/09/12 - 2018/09/16
【目的】細胞は染色体分配を行う際,主に微小管によって構成された,紡錘体とよばれる細胞内構造体により行われる。最近,細胞質サイズが紡錘体の安定性に影響を与えていることが明らかとなった。本研究では,紡錘体を主に構成する微小管に着目して,紡錘体の安定性を変化させる原因を,ライブイメージングと顕微操作技術を組み合わせて直接的に明らかにすることを目的とした。【方法】本研究ではマウス卵母細胞を実験に用いた。顕微操作により細胞質量を半分に減らした卵母細胞(Half)と細胞質量を2倍にした卵母細胞を作成した。これらの卵母細胞において,Photoactivation-GFPを用いて,高解像度ライブイメージングにより,微小管の安定性を観察した(実験1)。見られた微小管の安定性の変化が,紡錘体の安定性に関係しているかを調べる為,Half卵母細胞において,微小管形成阻害剤で処理し,染色体の整列に影響があるかを調べた(実験2)。さらに,微小管安定性の変化が,卵母細胞のどの要素によるものなのかを特定した(実験3)。最後に,微小管安定性の変化が,初期胚の発生過程でも同様にみられるのかを確認した(実験4)。【結果および考察】( 実験1)紡錘体微小管の安定性は,細胞質量を小さくすると安定し,大きくすると不安定になった。すなわち,微小管の安定性は紡錘体の安定性に関与していることが示唆された。(実験2)Half卵母細胞を微小管形成阻害剤で処理したところ,染色体の整列が遅延した。よって,紡錘体の安定性には微小管の安定性が関係していることが明らかとなった。(実験3)核膜崩壊後に細胞質量を半分にした卵母細胞の微小管の安定性はコントロールと同様であった。すなわち,微小管の安定性は核内物質の濃度で決まっていることが明らかとなった。(実験4)初期胚での微小管安定性を計測したところ,細胞分裂毎に安定性が高くなっていった。すなわち,胚発生過程の有糸分裂においても核/細胞質比によって微小管の安定性が変化していることが明らかとなった。