日本繁殖生物学会 講演要旨集
第111回日本繁殖生物学会大会
セッションID: AW2-2
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卵巣
新生仔マウスのオートファジーの促進は原始卵胞プールを拡大し生殖能を高める
*渡辺 連佐々木 将木村 直子
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抄録

【目的】哺乳類雌の潜在的な卵巣機能は,胎生後期から出生前後に形成された原始卵胞の備蓄数に左右され,その後の生殖能や生殖寿命を支えている。我々は出生直後の新生仔マウスへの授乳制限が,卵巣内のオートファジーを活性化し,原始卵胞の形成を促進することを報告している。本研究では,「原始卵胞形成期で人為的にオートファジーを増強し,原始卵胞数を上方制御できれば,生殖能と生殖寿命を向上させられるのではないか」という仮説を立て,それらを検証した。【方法】原始卵胞数のピークである生後60時間までを形成期,その後を減少期とし,新生仔C57BL6/J雌マウスに,オートファジー特異的誘導ペプチドTat-beclin1 D11(D11区)あるいは生理食塩水(対照区)を腹腔内投与した。36 h~108 hで回収した卵巣を用いて,原始卵胞数と一次卵胞数を評価した。もう一方の卵巣でオートファジーに関与および卵胞発育に関与するタンパク質の発現動態を解析した。さらに2~13ヶ月齢までの卵巣重量,卵胞数および妊娠率,平均産仔数を評価した。【結果と考察】卵胞形成期D11区の原始卵胞数は,同時間の対照区に比べ1.2~1.5倍高くなり,一次卵胞数は低い傾向がみられた。卵胞減少期D11区は,原始卵胞数と一次卵胞数に対照区と差がみられなかったため,以降の実験では,卵胞形成期D11区のみを用いた。D11区では,オートファジーマーカーのLC3B-II/I比は,同時間の対照区に比べ有意に高くなった。卵胞発育を抑制するPTENの発現量も高い傾向がみられた。2ヶ月齢のD11区は,対照区に比べ原始卵胞数が約1.5倍高かった。D11区の産仔数は,同月齢の対照区に比べ2および6ヶ月齢で有意に高く,10ヶ月齢でも高い傾向がみられた。また,10ヶ月齢の妊娠率も高い傾向がみられた。以上から,マウスでは,原始卵胞形成期でのオートファジーの促進が原始卵胞プールを拡大し,雌個体の生涯の生殖能を向上させることが初めて示された。

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