日本繁殖生物学会 講演要旨集
第111回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-12
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生殖工学
ブタ卵核胞移植用ピペットの先端肉厚に関する至適条件の検討
*金田 秀貴今井 里実桑山 リオ桑山 正成
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抄録

【目的】近年急増している晩婚化などによる高齢不妊の主因として卵子の老化が指摘されている。老化により卵子は染色体異常だけでなく,その受精能,発生能が低下することが知られており,その治療法として,卵核胞(GV)移植による細胞質置換を用いた卵細胞質の正常化,発生能の改善が試みられている。GV移植は極めて高度で安定的な手技の確立が必須であるが,特に脱核・移植後の卵子生存性に大きく影響するピペット形状の条件設定が重要である。本研究ではGV移植による卵細胞質置換に最適なピペットの先端形状,特に肉厚の至適条件について検討した。【方法】食肉処理場より入手したブタ卵巣内直径4~5 mmの卵胞から常法により卵丘細胞・卵子複合体を採取後,0.1% ヒアルロニダーゼ存在下でピペット操作により裸化処理を行って得た1,081個のGV期卵子を供試した。20%ブタ卵胞液を添加したM199培地を培養に用いた。サイトカラシンB(5ug/ml)を含む培地での10,000xg,5分間の遠心処理によりGVを可視化させ,ピエゾを用いてGV除去,移植を行った。ピペットの内径をブタGV外径にほぼ等しい30±0.15um ,先端角度は90±2°になるようにプーラーで作製後,フッ化水素溶液により肉厚が約2um(A群),1um(B群),0.5um(C群)に段階的に薄化した。肉厚・内径値は,金属顕微鏡を用いて測定した。各肉厚のピペットによりそれぞれGV置換を行い,置換直後の生存率,再構築率および24時間後の生存率を比較した。【結果】A,BおよびC群における置換直後の再構築率はそれぞれ,50.5,61.5および72.3%,24時間後の生存率はそれぞれ30.9,59.4および70.0%であった。ピペット先端肉厚がGV置換の成功率に大きな影響を及ぼしていることが示され,特に先端肉厚が最薄0.5um場合に最も優れた成績であった。本大会では各薄化ピペットの脱核および核移植時の影響を含めた詳細データに加え,第二減数分裂中期への成熟率と今後の展望について考察したい。

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© 2018 日本繁殖生物学会
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