日本繁殖生物学会 講演要旨集
第111回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-13
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生殖工学
トランスジェニックカニクイザル作製のためのユビキタスプロモーターの検討
*清田 弥寿成築山 智之浅見 拓哉岩谷 千鶴土屋 英明中村 紳一郎依馬 正次
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抄録

【目的】近年,非ヒト霊長類にも適用できる遺伝子組替え技術が開発されたことから,今後,多様なヒト病態モデルカニクイザルの作出が期待される。外来遺伝子を全身性に高発現するTgカニクイザルを作出するためには,プロモーターの選択が重要であるが,カニクイザルでは個体レベルで十分な検討が行われていない。そこで,他の動物種においてユビキタスプロモーターとして頻用されているCAG,EF1αプロモーターを用いてGFP Tgカニクイザルを作製し,組織におけるプロモーター活性を評価した。またカニクイザル個体を用いた実験系は高度な動物倫理が求められるため,プロモーター活性を評価するアッセイ系を構築することも目的とした。【方法】各種プロモーターを搭載したレンチウイルス粒子を囲卵腔に注入した。その後ICSIにて授精させ,GFP陽性胚盤胞を仮親に胚移植することでTg産仔を作出した。産仔は皮膚生検,採血を行いGFPの発現を蛍光免疫染色,FACS,RT-qPCRにより評価した。プロモーター活性を試験管内で評価できるアッセイ系を構築するために,カニクイザルES細胞のAAVS1遺伝子座に各種プロモーターをノックインし,GFP発現レベルを未分化なES細胞,胚葉体,神経細胞などの分化細胞間で比較した。【結果】CAGプロモーターで 3頭,EF1αプロモーターで3頭のGFP Tgカニクイザルの作製に成功した。CAG GFP-Tgでは1コピーのTg挿入でも蛍光が皮膚で観察されたのに対し,EF1α GFP-Tgでは4コピーの挿入でも蛍光が観察されない個体が見られた。ES細胞を用いた解析から,未分化なES細胞においてはEF1αプロモーターの活性が強いものの,胚葉体形成後は弱かった。一方,CAGプロモーターの活性は未分化なES細胞では弱いものの,分化とともに発現が増加することが分かった。以上の解析結果から,個体でのGFP発現パターンとES細胞分化系は概ね一致しており,ES細胞分化系を用いたアッセイ系で個体レベルの解析を代替えできる可能性が示された。

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