日本繁殖生物学会 講演要旨集
第111回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-30
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生殖工学
オーキシン依存的にマウス卵内のタンパク質を分解する技術の開発とPLCζを用いた卵活性化法への応用
*三浦 健人的場 章悟越後貫 成美並木 貴文伊藤 潤哉柏崎 直巳小倉 淳郎
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抄録

【目的】哺乳類の受精では,精子が持ち込むタンパク質 phospholipase C zeta(PLCζ)が卵を活性化させ,その後の胚発生を誘導する。PLCζ mRNAを顕微注入しても,卵の活性化を誘導することができる。本研究では,注入するPLCζ mRNA濃度と,注入卵の活性化および胚発生との関係を明らかにすることを目的とした。研究にあたり,auxin-inducible-degron(AID)配列を持ったタンパク質をオーキシン依存的に分解する技術(AID技術)をマウス卵に応用することを試みた。【方法】B6D2F1マウス未授精卵に,各濃度条件(100 pg–100 ng/μL)のヒトPLCζ(hPLCζ)mRNAを顕微注入し,活性化率(前核形成率)および発生率(2細胞および胚盤胞率)を培養下で調べた。また,hPLCζ-AID-EGFP mRNAを注入したマウス卵を,オーキシン存在下で培養し,GFP蛍光強度および円形精子細胞注入法(ROSI)での産子率を求めた。【結果】100 pg–10 μg/μLのhPLCζを注入した卵は,活性化率と発生率が共に低かった。100 μg–100 ng/μLのhPLCζを注入した卵は,高い活性化率を示した。100 μg/μLのhPLCζを注入した卵が高い発生率を示した一方で,10 ng–100 ng/μLで注入した卵の発生率は低かった。hPLCζ-AID-EGFPを注入したマウス卵で観察されたGFP蛍光は,オーキシン添加培養により減少した。高濃度のhPLCζを注入した卵で観察された低発生率は,オーキシン添加培養により改善された。hPLCζ-AID-EGFPを注入し,オーキシン存在下で培養した卵を用いてROSIを行った結果,従来の卵活性化法と同程度の産子率が得られた。本研究により,AID技術を用いてマウス卵内のタンパク質を分解できること,高濃度のhPLCζ mRNAから翻訳されるタンパク質を分解することで胚発生率が改善することが示された。

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