日本繁殖生物学会 講演要旨集
第111回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-1
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臨床・応用技術
ホスファターゼ阻害剤によるウシ精液の液状保存効果
*難波 陽介古家後 雅典坂本 与志弥内山 京子
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抄録

【目的】本研究は,ウシ精子運動性が中温度域(15~20℃)で維持する輸送法を見出すことを目的とした。【方法】5頭のホルスタイン種種雄牛から採取した原精液を用いた。<実験1>トリス‐クエン酸糖液(TC液)またはホスファターゼ阻害剤カクテル加TC液(PIC液)を用いて精液を希釈し,18℃で24時間保存した。<実験2>0,0.1,1または10 mMのイミダゾール(Imi),フッ化ナトリウム(NaF)またはモリブデン酸ナトリウム(Mol)加TC液を用いて精液を希釈し,18℃で24時間保存した。<実験3>10 mMのImi加TC液で精液を希釈し,魔法瓶で15~20℃に保温しながら宅配便により輸送した。実験1~3で保存または輸送した精液はTC液で2回洗浄し,常法に従って凍結した。保存後または輸送後,凍結融解後および融解後のインキュベーション中の精子運動性を経時的に測定した。【結果および考察】<実験1>PIC液群はTC液群より,運動精子率が24時間保存後に高く,凍結融解後のインキュベーション中に高く推移した。<実験2>PIC液に含まれる3種類のホスファターゼ阻害剤について,それぞれ精子運動性に及ぼす効果を検討した。Imi添加では,測定中に運動精子率が濃度依存的に高く保たれ,10 mMで最も高かった。NaF添加では,10 mMで24時間保存後顕著に低下したが,インキュベーション中に向上し,いずれの濃度よりも高く推移した。Mol添加では,10 mMで24時間保存後に最も高かったが,凍結融解後およびインキュベーション中はいずれの濃度でもほとんど差がなかった。<実験3>実験2で精子運動性が高く保たれた10 mMのImi添加TC液を用いて精液を輸送した。輸送後およびインキュベーション中の運動精子率は無添加より高く推移した。以上より,イミダゾールは中温度域における輸送でウシ精子運動性を保つために有効な添加剤であることが示唆された。本研究は,日本中央競馬会畜産振興事業の助成を受けて行った。

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© 2018 日本繁殖生物学会
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