日本繁殖生物学会 講演要旨集
第111回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-9
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性周期・妊娠
マウス着床誘起胚においてAktがeNOSのリン酸化に及ぼす影響
*竹内 栄作関 美沙都福井 えみ子松本 浩道
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抄録

【目的】本研究室において,着床遅延胚および着床誘起胚における内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現動態を解析した結果,着床能力獲得過程において,eNOSのリン酸化が関与することが示唆されている。内皮細胞や血管芽細胞において,Akt経路がeNOSのリン酸化に作用することが報告されている。また,PI3K/Akt経路はマウス胚盤胞における細胞接着因子の発現に関与することが報告されている。このことから,Aktを介したeNOSのリン酸化により着床能力が獲得される経路の存在が考えられる。よって本研究では,マウス胚盤胞の着床能力獲得過程においてAktがeNOSのリン酸化に作用しているか検討した。【方法】ICR雌マウスを用いて,妊娠4日目に卵巣摘出を行い,妊娠5~7日目にプロゲステロンを投与して着床遅延モデルを作出した。プロゲステロン投与23時間後に着床遅延胚を,エストラジオール-17βの投与23時間後に着床誘起胚をそれぞれ回収した。固定後,着床遅延胚および着床誘起胚におけるリン酸化型Akt(p-Akt),リン酸化型eNOS(p-eNOS)の発現動態を多重免疫蛍光染色により解析した。また,Akt阻害剤MK-2206処理をした着床誘起胚におけるp-eNOSの発現動態を同様に解析した。【結果】着床遅延胚,着床誘起胚においてp-Aktおよびp-eNOS発現は栄養外胚葉の細胞質で共局在していた。さらに着床遅延胚と着床誘起胚を比較して,p-Aktおよびp-eNOS発現は着床誘起胚において高く,同一胚におけるそれらの発現量は正の相関を示した。また着床誘起胚においてAkt阻害剤MK-2206処理をしたところ,対照区と比較してp-eNOS発現はMK-2206処理区において減少した。本研究の結果から,着床誘起胚においてeNOSのリン酸化にAktが作用していることが示された。このことから,Aktによるリン酸化を介してeNOSが活性化されることで,マウス胚盤胞の着床能力が獲得されることが示唆された。

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