主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第111回日本繁殖生物学会大会
開催地: 信州大学繊維学部
開催日: 2018/09/12 - 2018/09/16
【目的】正常な哺乳動物の発生には両親由来の遺伝子によるゲノムインプリンティング機構の働きが重要であり,雄ゲノムのみで発生が進行する雄性発生胚を解析することで,発生における母方および父方遺伝子の役割の解明,ゲノムインプリンティングの異常による体細胞クローン作出効率の改善等が期待される。しかしウシにおいて,体外受精,雌性発生胚,および核移植胚の作出については多数報告があるが,雄性発生胚の効率的な作出技術は確立していない。そこで本研究では,ウシ除核卵母細胞を用いた雄性発生胚の作出について検討を行った。【方法】食肉処理場由来の卵巣から採取したウシ卵母細胞を体外成熟培養後,第1極体を含む細胞質を押し出すことで除核を行った。体外受精培養液にはBO液を用い,精子濃度を1×106,5×106,25×106,および50×106/mlに調整し除核卵母細胞に媒精した。除核卵母細胞は媒精から6時間後に透明帯に付着した精子を除去し,CR1aa培地に移した。媒精12時間後に一部の除核卵母細胞の透明帯を酵素処理によって除去し,Hoechst33342で染色することで精子侵入率を調査した。体外発生培養は8日間行い,卵割率および胚盤胞期胚発生率を検討した。【結果および考察】除核卵母細胞への精子侵入率は,精子濃度1×106,5×106,25×106,および50×106/mlでそれぞれ50,67,100および100%となった。卵割率は,24,72,89および90%となり,1×106/mlが有意に低い値となった。胚盤胞期胚発生率は0,14,25および14%となり,1×106/mlが有意に低い値となった。以上本研究より,ウシ除核卵母細胞を用いた雄性発生胚の作出には,媒精する精子濃度が影響を及ぼすことが示唆された。