2019 年 122 巻 6 号 p. 884-890
近年, 壊死性筋膜炎と重症蜂窩織炎の鑑別に LRINEC スコア (Laboratory risk indicator for necrotizing fasciitis score) が補助的診断ツールとして提唱されている. われわれは2007年から2017年の間に当院で経験した症例および医中誌で報告されている頸部壊死性筋膜炎の症例を対象として, LRINEC スコアの有用性について検討した. LRINEC スコアは壊死性筋膜炎群で平均7.2点, 蜂窩織炎群では1.6点であり, 統計学的に有意差を認めた.
壊死性筋膜炎と診断するためのカットオフ値を LRINEC スコア6点以上とした場合, 壊死性筋膜炎群においては17例 (20例), 蜂窩織炎群においては1例 (13例) が LRINEC スコア6点以上であった. その結果, 感度85%, 特異度92.3%, 陽性的中率 (PPV) 94%, 陰性的中率 (NPV) 80%であった. 耳鼻科領域における LRINEC スコアは壊死性筋膜炎の診断補助として有用と思われる点もあるが, いくつかの問題点もあり, 文献的考察を加え報告する.