日本繁殖生物学会 講演要旨集
第112回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-9
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生殖工学
卵母細胞特異的ノックダウンシステムの確立
*佐々木 恵亮高岡 沙綾尾畑 やよい
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抄録

【目的】遺伝子機能を解析するための手法のひとつとして,これまでにshort hairpin RNA等を介したノックダウンマウスの作製が行われてきた。さらに,ユビキタスに発現するEef2のイントロン内に人工的に設計されたartificial microRNA(amiRNA)をノックインすることで,Eef2転写制御下でamiRNA配列に相補的な遺伝子をノックダウンするシステムが報告された(Miura et al., 2015)。このことから,amiRNAを挿入するホスト遺伝子を選択することで組織特異的ノックダウンが可能になると考えられた。本研究では卵母細胞特異的ノックダウンシステムの構築を目的とし,CRISPR/Cas9によってamiRNAノックインマウスを作出し,その効果を評価した。【方法】EGFPトランスジェニックマウスの受精卵に,エレクトロポレーションでCas9-guide RNA複合体および一本鎖DNAを導入した。一本鎖DNAはEGFPを標的とするamiRNA配列およびノックイン部位のホモロジーアームを含む配列とした。発生した2細胞期胚を偽妊娠雌マウスに移植し,産仔を得た。EGFP+/amiRNA+雌マウスより成長期および成長完了卵母細胞を採取し,EGFP蛍光強度によりノックダウン効果を評価した。【結果】卵母細胞特異的に発現するZp3のイントロン内に高効率にゲノム編集可能な部位を複数同定した。各部位にamiRNAがノックインされたマウスラインを樹立した。EGFP+/amiRNA+マウスの体細胞はEGFP蛍光を示したものの,卵母細胞では成長期から蛍光強度の顕著な減衰がみられ,成長完了卵母細胞において蛍光はほとんど消失した。以上のことから,Zp3イントロンへのamiRNAの挿入は,卵成長過程を通して標的遺伝子の機能を抑制できることがわかった。本手法はわずか1世代の交雑で目的のマウスが得られるため,従来のCre/loxP法よりも効率的に遺伝子機能解析を進められる研究ツールになると期待される。

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© 2019 日本繁殖生物学会
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