主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第112回日本繁殖生物学会大会
回次: 112
開催地: 北海道大学
開催日: 2019/09/02 - 2019/09/05
【目的】一般的にガラス化ブタ卵子の生存性や発生能は低く,凍結によるミトコンドリア(Mt)が損傷し卵子の質低下が起こることが知られている。一方,凍結前後のレスベラトロール(Res)によるSIRT1の活性化がガラス化したウシ胚の生存性やMt機能を改善させることを我々は報告した。本研究では,ブタ卵核胞(GV)期卵子のガラス化がMtに及ぼす影響について検討し,ガラス化後の培地へのRes添加がMt機能を改善させるかを検討した。【方法】ブタ卵巣表面の卵胞から卵子顆粒層細胞複合体(COCs)を回収後,COCsの状態でガラス化融解処理を行った。卵子の生存率はFluorescein diacetate(FDA)染色にて評価した。卵子内のMtの量は免疫染色によるTOMM20の発現量とリアルタイムPCRによるMtDNAコピー数で評価した。一方,Mtの質はMito Tracker Orange染色による膜電位(MMP)測定とATP量測定によって評価した。Resは成熟培地中に0.1 µMの濃度で添加した。また,SIRT1とNRF2の発現量は免疫染色にて比較した。【結果】ガラス化によって卵子の生存率は低下した。融解後のRes添加は,20 h後のSIRT1の発現量を有意に増加させ,生存率を有意に増加させた。リアルタイムPCR法によりガラス化によるMtゲノムの損傷が確認された。融解直後のガラス化卵子内ATP量は有意位に低く44 h後には差が認められなくなった。Res添加は新鮮卵子ではATP量を有意に上昇させたが,ガラス化卵子には変化が認められなかった。融解直後のMMPは新鮮卵子に比べ有意に高く,44 h後も高かったが,Res添加はこれを有意に低下させた。また,融解44 h後にガラス化卵子内のMt数は新鮮卵子に比べ少なかったがRes処理により有意に増加した。NRF2の核内局在はガラス化区でも新鮮区でもRes処理によって有意に増えた。本研究よりガラス化処理はMtを損傷させ,Res処理がMtを回復させ生存性を改善する可能性が示唆された。