日本繁殖生物学会 講演要旨集
第112回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-113
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ポスター発表
ウシ成熟未受精卵子用の新規ガラス化デバイス,シルクフィブロインシート
*中山 研祐知念 照一朗手島 淳輝玉田 靖平林 真澄保地 眞一
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抄録

【目的】哺乳類未受精卵子のガラス化保存成績は,Cryotop®などの超急速冷却用デバイスの普及により飛躍的に向上した。しかしながら厳しい時間的制約があるなか,卵子をデバイスにローディング後にガラス化保存液(VS)の搭載液量を最小化するなど,熟練のピペット操作技術が必要とされる。これまでに当研究室では,ナイロンメッシュの裏側からVSを吸引除去する方法がラットの膵島で有効なことを報告している。本実験では,吸水性に優れた多孔質素材を蚕繭から調製し,VS液量最小化を容易にするウシ成熟未受精卵子のガラス化デバイスとして使用可能か,検討した。【方法】精練した家蚕繭糸を9 M 臭化リチウムで溶解・透析することでシルクフィブロイン(SF)水溶液を調製した。1.5% SF水溶液をエタノールブライン凍結機で凍結し,融解することで厚さ0.1-mmの多孔性シート素材を作製した。5層に重ねたSFシートをデバイスとし(比較対照はCryotop®と孔径37-µmナイロンメッシュ),IVM 22時間後に第一極体放出を確認した裸化ウシ卵子を10個単位で15% EG,15% DMSO,0.5 M シュクロースからなるVSを用いてガラス化保存した。加温・希釈,回復培養(2時間),IVF(6時間)を経て,低酸素濃度下のIVC(8日間)に供した。【結果】ガラス化・加温後の卵子回収率にデバイス間で差はなく,すべて100%だった。形態的に正常に見えた卵子の割合にもデバイス間で差はなかった(98.9〜100%)。IVF・IVC後の胚盤胞発生率は,新鮮対照区が24.7%,SFシート区が18.3%,Cryotop®区が18.9%,ナイロンメッシュ区が14.3%だった。SFシート区はデバイス上に卵子をローディングしてからVS量を減らす特段の操作をすることなく,その高吸水性に任せて卵子周囲のVS量を最小化できる。加温卵子の胚盤胞発生成績も良好であったことから,SFシートは有望な新規ガラス化デバイスとして期待できる。

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