主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第112回日本繁殖生物学会大会
回次: 112
開催地: 北海道大学
開催日: 2019/09/02 - 2019/09/05
【目的】細胞透過性ペプチド(CCP)は,本来細胞膜を通過できないタンパク質や核酸を細胞内に導入するための方法として着目されている。これまで生殖細胞へのCCPを介したタンパク質の導入は胚盤胞期胚のみに限られていた。本研究ではCCPとして9つのアルギニン(R)からなる9Rを融合した緑色蛍光タンパク質(GFP-9R)がマウスの卵母細胞と精子で効果的に導入できるのか調べた。【方法】8週齢以上のICR系マウスで,過排卵処理後の雌から排卵卵子を,雄の精巣上体から精子を回収した。これらをGFP-9RあるいはGFPを添加した培地で30分~1時間の培養後に固定し,共焦点レーザー顕微鏡で観察した。さらに,GFP-9R染色精子を用いて,体外受精あるいは超音波処理で尾部を切断後に顕微授精し,得られた胚を観察した。【結果】卵では,細胞質でのGFP-9Rのシグナルはみられないものの,透明帯や囲卵腔,崩壊した第一極体に強いシグナルがみられた。一方でGFPのシグナルは確認されなかった。また精子では,GFPのシグナルは全く検出されず,GFP-9Rでは一部の精子で弱く検出された。しかしこれらの精子を用いて体外受精をおこなった結果,透明帯に付着した精子は蛍光を示さなかったが,受精に関与しない死精子で強い蛍光がみられた。そこで超音波破砕した精子をGFP-9Rで染色したところ90%以上の精子頭部が効率的に染色されることを見出した。さらにGFP-9R染色精子頭部を用いて顕微授精を行ったところ,GFP-9R タンパク質を卵内に取り込ませることができた。以上から,任意のタンパク質を効率的に卵子に導入するために,CCPをもつ任意のタンパク質を超音波処理した精子に付着させることで,顕微授精と同時にタンパク質の卵内に効率的に導入できることが示唆された。