主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第113回日本繁殖生物学会大会
回次: 113
開催地: 東北大学
開催日: 2020/09/23 - 2020/09/25
【目的】肥満とは,細胞や組織に必要以上の脂肪が蓄積した状態であり,余分な脂肪は脂肪滴と呼ばれる細胞小器官に貯蔵される。前回大会において,私たちは,独自に開発したマウス卵子からの脂肪滴単離技術を用いて,適量の脂肪滴を卵細胞質に保持することがその後の胚発生に必須であることを報告した。本研究では,短期間の高脂肪食摂取が卵子の脂肪滴量に及ぼす影響を解析した。【方法】C57BL/6Jメスマウスに高脂肪食(60 kcal% 脂肪含有量)と低脂肪食(10 kcal% 脂肪含有量)を短期間(3,7,14,21日間)摂取させた後に,過剰排卵処理によってMII期卵子(MII卵)を採取した。まず,MII卵の中性脂肪の変化を測定するために,高脂肪食と低脂肪食のそれぞれを21日間摂取したマウス由来のMII卵を用いて,トリアシルグリセロール種を質量分析計によって分析した。次に,それぞれの実験区から採取したMII卵を用いて脂肪滴単離操作を行った。この操作は二段階の遠心と高浸透圧処理の組み合わせで,一回目の遠心で細胞膜近辺に集積した脂肪滴が,二回目の遠心で囲卵くうに放出される。そこで,放出された脂肪滴の面積,放出割合,細胞質の面積を計測した。【結果・考察】質量分析計を用いた分析から,21日間の高脂肪食摂取によって,MII卵に含まれるすべてのトリアシルグリセロール種の含量が増加することが分かった。次に,高脂肪食と低脂肪食のそれぞれを3,7,14,21日間摂取したマウスから採取したMII卵を用いて脂肪滴単離操作を行ったところ,すべての期間で高脂肪食摂取によって,囲卵くうへ放出された脂肪滴の大きさと放出率が優位に増加することが明らかとなった。一方,細胞質の面積には高脂肪食と低脂肪食の実験区で優位な差はなかった。本研究によって,3週間以内の短期間の高脂肪食摂取によってMII卵の脂肪含量が増加することが明らかとなった。この結果は,食事由来の脂質が急速に卵子の脂質代謝に影響を及ぼしている可能性を示唆している。