主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第113回日本繁殖生物学会大会
回次: 113
開催地: 東北大学
開催日: 2020/09/23 - 2020/09/25
【目的】多機能尾部センサ(温度センサと加速度センサを内蔵)を用い,豚の姿勢や行動を判別可能なアルゴリズムを開発するとともに,センサデータを機械学習により解析することで分娩予測が可能か検討した。【方法】まず,ストール飼育下の雌豚4頭の尾根部腹側にセンサを装着し,加速度データから尾の長軸に対するロール角を算出した。並行してビデオ撮影を行い,ロール角から姿勢判別ならびに姿勢変化を検知可能なアルゴリズムの開発を試みた。ついで,妊娠豚10頭に対し,分娩前10日頃~分娩後7日頃までセンサを装着し,3分間隔で体表温,活動量,ロール角を計測した。体表温は1時間毎の最高値を抽出し,前3日間の同時刻平均値との差(体表温差)を算出して解析した。ロール角からは1時間毎の横臥時間および姿勢変化回数を算出し,1時間毎の活動量の平均値とともに過去24時間の合計値と過去24~48時間における合計値との比(横臥時間比,姿勢変化回数比,活動量比)を算出して解析した。算出したデータを基に,3種類の機械学習法(ランダムフォレスト,ニューラルネットワーク,サポートベクターマシン)を用いて分娩予測モデルを作成し,Leave-Out-One-Animal法により性能を比較した。【結果と考察】ロール角および連続する2時点間におけるロール角差分に対し,それぞれ閾値を±0.9および±0.2とした場合,横臥を感度92.5%・精度96.7%で判別可能であり,姿勢変化を感度80.8%・精度70.7%で検知可能であることが明らかとなった。また,分娩前日には対照期間(分娩前7~5日目)に比べ,体表温差は低い傾向にある一方,活動量比と姿勢変化回数比は有意に高値を,横臥時間比は有意に低値を示すことが明らかとなった。これらの変化を表す特徴量を用いることで,ニューラルネットワークを用いた場合に最大で感度100%,精度90.9%で24時間以内に分娩することを予測可能であることが示唆された。以上から,本手法は省力的な分娩予測技術としての利用が期待される。