日本繁殖生物学会 講演要旨集
第113回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-20
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ポスター発表
生後の精巣発達は精巣平滑筋に発現する転写因子Hic1により制御される
*内田 あや金井 克晃DOBRINSKI Ina
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抄録

【目的】精巣平滑筋は精細管内のluminal fluidおよび精子の輸送を担う一方で,細胞外基質や成長因子の分泌により精原幹細胞ニッチを支持する。しかし,精巣平滑筋が生後,精巣の発達において果たす役割は謎に包まれたままである。今回我々はガン抑制遺伝子Hic1が精巣平滑筋細胞に年齢依存的に発現する事を発見した。本研究では当遺伝子を手掛かりに,精巣平滑筋を介した精巣発達の制御機構に迫る。【方法】Hic1発現の可視化にはHic1CreERT2:ROSA26tdTomatoマウスを用い,採材1・2日前に4-OHT投与をする事でHic1発現細胞をtdTomatoにより標識した。平滑筋特異的なHic1欠損にはaSMACreERT2:Hic1flox/flox:ROSA26tdTomato (cKO) マウスを用い,生後4・5日目に4-OHT投与によってHic1欠損を誘導した。対照群としては同腹のaSMACreERT2: Hic1+/+:ROSA26tdTomato (WT) マウスを用いた。【結果】Hic1-tdTomatoを発現する平滑筋細胞の割合は生後1週齢では56%であったが,成体では~2%に留まった。生後平滑筋特異的にHic1を欠損させたところ,平滑筋細胞の増殖活性が有意に上昇し,サイズ・重量の増加した精巣が形成された。cKOマウスの精細管は増加したマイオイド細胞に囲まれ精細管径が膨大している一方で精巣網の拡張は見られなかった。このような精細管の収縮力は低下しており,luminal fluid flowの停滞および円形精子細胞以降の生殖細胞の減少が見られた。なお,生後人為的に精細管結紮によりluminal flowの鬱滞を引き起こしたマウスではこのような平滑筋数の増加は見られなかった。以上より,Hic1は生後の精巣発達において平滑筋細胞の増殖を制御する事,そして生後の精巣発生過程において生み出される平滑筋の数に応じて,最終的に生じる精細管および精巣のサイズが規定される可能性が示唆された。

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