主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第113回日本繁殖生物学会大会
回次: 113
開催地: 東北大学
開催日: 2020/09/23 - 2020/09/25
【目的】始原生殖細胞(PGCs)は,活発な移動能力を備え,生殖隆起へと自律的に移住後,増殖,分化することが知られている。一方,生体内のダイナミックな細胞移動現象として,ガン細胞の転移が挙げられる。転移性ガン細胞は,高い転移能力を持ち,病巣を体内の至る所に広げる。さらに,転移したガン細胞は,旺盛な増殖能力を有し,正常組織と競合する。この時,ガン細胞は血管内皮増殖因子を分泌し,周囲に毛細血管を新生することで,増殖に必要な栄養や酸素を供給する。このように,PGCsとガン細胞は特定の領域に移動し,増殖する性質を有しており,これらの現象を比較することで,活発に移動する細胞の特徴や移動制御機構を知る手がかりとなる。本研究では,基礎的な研究として,PGCs定着後の生殖隆起における血管新生能力を腫瘍細胞と比較した。【方法】胚齢11.5日のマウスから尿生殖隆起(UGC)を採取し,トリプシンで分散した細胞集団を,PGCsを含むUGC群とした。腫瘍細胞はマウスメラノーマ細胞あるいはテラトーマ細胞を使用した。また,マウス胚由来体細胞,中腎由来細胞を対照群として使用した。次に,これらの細胞の血管新生能力を検討するため,性成熟後のICRマウスに各細胞(1.0×106個/匹)を皮下注射した後,10日後に皮膚片を採取し,組織中の血管網の様子を顕微鏡下で観察した。【結果】UGCあるいはメラノーマ細胞を投与した群において,対照群やテラトーマ群と比較して有意(P<0.05)に総血管長が長かった。また,UGC群の総血管長はメラノーマ細胞群よりも長く,全ての投与群の中で,最も発達していた。【考察】本研究から,生殖隆起由来細胞は,腫瘍細胞よりも高い血管新生能力を持つことが明らかとなった。しかし,胚発生期には,血管を含む様々な組織が形成されるため,生殖隆起における特異的な機能であるか精査する必要がある。本実験より得られた結果を元に,今後は単離したPGCsあるいは生殖隆起由来体細胞で検討を行い,PGCsの遊走との関連性を調べる必要がある。