日本繁殖生物学会 講演要旨集
第113回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-62
会議情報

ポスター発表
当帰芍薬散がウシ卵管収縮弛緩運動に与える影響
*窪田 早耶香山本 ゆき木村 康二
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】初期胚や配偶子の輸送には卵管収縮弛緩運動が不可欠であり,その異常は不妊の原因の1つと考えられている。婦人科系の諸症状を改善する三大漢方薬の1つとして知られている当帰芍薬散(TSS)は,当帰・芍薬・川芎・茯苓・蒼朮・沢瀉の6つの成分から構成されている。TSS は,プロスタグランジン(PG)F2α惹起の子宮収縮を抑制する作用や,エストロジェンレセプター (ER)αや ERβを介さないE2様作用を示す。また,TSS 構成成分の一つである当帰や芍薬中のペオニフロリンが卵管収縮弛緩因子である PGE2 産生を抑制することから,TSS と卵管収縮弛緩因子との関連性が示唆されている。本研究では,TSS の卵管収縮弛緩運動を改善させる不妊治療への有用性を明らかにする目的で,TSS がウシ卵管収縮に与える影響を検討した。【方法】ウシ卵管峡部組織を子宮側から5 mm ずつ 3 片に切り取り,マグヌス法を用いてクレブスリンガー液(KRS)で溶解した TSS エキス(100 µg/ml, 1000 µg/ml)添加後1時間までの収縮頻度,振幅,緊張度を経時的に測定した。使用したウシ卵管組織は,卵巣の所見により排卵直後,黄体期,排卵前の3つのステージに分け,各ステージの TSS の影響を検討した。【結果・考察】収縮頻度および振幅は,どのステージにおいても有意な変化は見られなかった。一方で,緊張度は全ステージで有意に亢進した(P < 0.05)。排卵直後の卵管では対照区に対して100 µg/ml および1000 µg/ml TSS エキス添加で,その他の卵管では1000 µg/ml TSS エキス添加でのみ緊張度の有意な亢進が観察された(P < 0.05)。TSS エキス添加前からの経時的な変化を検討したところ,排卵直後の卵管では添加 9 分後以降,その他の卵管では添加 30 分後以降に有意な上昇が認められた(P < 0.05)。以上の結果から,TSS は緊張度を亢進させることでウシ卵管収縮運動を促進しており,特に排卵直後の卵管において,その効果が高いことが示された。

著者関連情報
© 2020 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top