日本繁殖生物学会 講演要旨集
第113回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-83
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ポスター発表
ラット乳腺における膜タンパク質CD9の発現解析
*堀口 幸太郎吉田 彩舟中倉 敬塚田 岳大藤原 研長谷川 瑠美瀧上 周大迫 俊二
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抄録

【目的】細胞表面抗原CD9は,膜4回貫通型のテトラスパニンファミリーの1つである。我々は,ラット下垂体前葉の成体組織幹・前駆細胞であるSOX2陽性細胞でCD9が発現することを明らかにし,CD9に対する抗体を利用した抗体ビーズトラップ法によりその純化に成功している。CD9は細胞外小胞であるエキソソームの膜にも存在し,エキソソーム分泌が増加する乳癌マーカーとしての利用が期待されている。しかし,健常時の乳腺のどの時期,どの細胞から発現しているのかは未だ不明であり,発現細胞が同定されれば,その純化,培養への応用も可能となる。そこで本研究では,ラットを用いて,妊娠,泌乳,離乳と乳腺組織の模様が大きく変化する時期でのCD9遺伝子発現の有無を明らかにすることを目的とした。【方法】リアルタイムPCRにより発現動態を解析し,mRNAの局在をin situ hybridization法により観察した。さらに二重蛍光免疫組織化学法によりCD9陽性細胞の同定を行った。また,CD9抗体を利用した抗体ビーズトラップ法により発現細胞の単離を行った。【結果】ラット乳腺上皮細胞でCD9遺伝子発現が観察され,その発現量は,妊娠,泌乳期に増加し,離乳期には減少するという乳腺上皮細胞数変化と似た傾向があることが明らかとなった。そして,抗体ビーズトラップ法により,ラット乳腺上皮細胞を約97%の純度で単離することができた。さらに,純化したCD9陽性乳腺上皮細胞に対し,siRNAによりCD9発現を抑制したところ,合成エストロゲンであるジエチルスチルベストロール処理による乳腺上皮細胞の増殖が抑制されることが明らかとなった。以上から,CD9はラット乳腺上皮細胞で発現し,その機能として細胞増殖に関与していることが示唆された。

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