日本繁殖生物学会 講演要旨集
第113回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-82
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ポスター発表
V1a受容体欠損マウスで観察される産仔数減少と分娩子宮の遺伝子発現変化
*土屋 裕義輿水 崇鏡
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抄録

【目的】バソプレッシン(VP)はオキシトシン(OT)に類縁の下垂体後葉ホルモンで,3種類のVP受容体(V1a,V1b,V2)のうち,子宮筋にはV1a受容体のみが発現する。我々のこれまでの解析からV1a受容体欠損(KO)マウスでは有意な分娩遅延と産仔数の減少,そして分娩時の子宮収縮の減弱が示された。そこで,V1a KOマウスの子宮ではどのような変化が起こっているのか,さらなる解析を行った。【方法】産仔数減少の時期を特定するため,妊娠5日目に着床部位の染色,妊娠14日目,18日目に胎仔数と胎仔重量の計測を行った。次に,V1a KOと野生型マウスの非妊娠時子宮と分娩後すぐの子宮を採取し,分娩関連因子の遺伝子発現を比較した。また,分娩後すぐの子宮の子宮筋層のみを単離し,同様に遺伝子発現を比較した。【結果および考察】妊娠5日目の子宮の着床部位の染色からV1a KOと野生型マウスでは着床数に有意な差は見られなかった。妊娠14日目と18日目の胎仔数の比較からはV1a KOマウスで胎仔の減少傾向が観察された。興味深いことに,V1a KOマウスでは子宮内で観察された異常胎仔の数が多く,胎仔の重量は有意に軽かった。このことからV1a KOマウスの産仔数減少は着床以降の子宮内での成長過程で起こると考えられる。また,子宮での遺伝子発現の比較を行ったところ,Oxtr, Ptgs2, Gja1, Ptgfrは非妊娠時よりも分娩後すぐの子宮で発現が高かった。一方で,Oxtは発現が有意に低下していた。子宮筋層のみの比較ではV1a KOマウスでOxtrの遺伝子発現が有意に亢進し,Oxtの発現が低下していた。OTの産生低下はタンパク質レベルでも観察されている。以上の結果から,V1a KOマウスではOTの発現低下を伴う一方で,代替機構が働き,OT受容体の発現が亢進する方向の変化が起きていることが明らかとなった。これはV1a KOマウスでは分娩そのものが消失しないことと深く関わると考えられる。

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