日本繁殖生物学会 講演要旨集
第98回日本繁殖生物学会大会
セッションID: 102
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生殖工学
ブタ・インスリンプロモーターを用いた糖尿病発症モデルマウスの作製
*渡邊 將人梅山 一大河野 博臣伊津野 直子長嶋 比呂志三木 敬三郎
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抄録
【目的】肝臓特異的な核転写因子であるHNF(Hepatocyte Nuclear Factor)-1αは膵臓の発生に関与することが知られている。その遺伝子の変異は, 若年性成人発症型糖尿病(MODY)を引き起こすことが知られている。我々はブタを用いた糖尿病モデルの確立を最終目的とし, ブタ・インスリン(INS)プロモーター下でヒト変異型HNF1α遺伝子を発現するベクターを構築した。本研究ではトランスジェニック(tg)マウスを作製し, 糖尿病発症の有無, 及び病態を評価した。
【方法】ヒトCMVエンハンサー, ブタINSプロモーター, ヒト変異型HNF1α, SV40ポリAシグナル配列を連結したベクターを構築し, 前核注入法によりトランスジェニックマウスを作製した。得られた産仔はPCR及びサザンブロット解析により導入遺伝子の確認を行った。血糖値及び体重の測定は3~8週齢で行った。導入遺伝子の発現はRT-PCRにより確認し, さらに膵臓の組織化学的分析を行った。
【結果】合計69匹の産仔のうち6匹のtgマウスが得られた。そのうち1匹(#9-2)が高血糖, 体重減少を示し糖尿病を発症した。他2匹が体重減少を呈し2~3週齢で死亡した。他の3匹は病態を発症しなかった。#9-2は4週齢で対照群と比べ約5倍の高血糖値を示し, 8週齢では体重が対照群に比べ約40%減少した。この個体では導入遺伝子の発現が膵臓, 肝臓など7臓器で確認された。また, 膵臓の組織化学的分析ではINS分泌細胞(β細胞)を含むランゲルハンス島の減少, その周辺の腺房細胞の萎縮・壊死が観察され, #9-2の高血糖はb細胞減少によるINS分泌障害によるものと示唆された。以上の結果よりブタINSプロモーター下でヒト変異型HNF1α遺伝子を発現するベクターによる糖尿病発症が確認された。この結果は糖尿病治療法を評価する糖尿病モデルブタ作製のための重要な知見を提供すると思われる。
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© 2005 日本繁殖生物学会
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