日本繁殖生物学会 講演要旨集
第98回日本繁殖生物学会大会
セッションID: 103
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生殖工学
前核注入法および顕微授精法により作製したマウス胚における導入遺伝子発現様式の比較
*河野 博臣斎藤 仁長嶋 比呂志
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抄録
【目的】DNA付着精子の顕微授精(ICSI)によって前核注入(PN)法と同等の効率でトランスジェニック(TG)個体作出が可能であることが報告されている。ICSI法ではMII期卵に外来遺伝子を導入する点がPN法と大きく異なる。このような特徴から、ICSI法では導入遺伝子の組み込みが、PN胚に比して胚発生のより早い時期に起こる可能性がある。その場合、ICSI法で作製された遺伝子導入胚は、導入遺伝子陽性割球と陰性割球が混在する、いわゆるモザイク胚になりにくいとの仮説が成り立つ。この仮説をICSI法によるマウス胚へのGFP遺伝子の導入によって検証することを本研究の目的とした。【方法】ICSI法はPerry ら1999に従い行った。CZB液で凍結融解した精子2~5×105個⁄10µlを25ngのCAG-EGFP(3.0kb)と5分間共培養した後、ICSIに用いた。前核注入には10ng⁄µlのDNAを用いた。ICSI法および前核注入法で作成した胚を桑実期–初期胚盤胞期まで培養し、発生率およびGFP発現率を比較した。両区の蛍光陽性桑実胚をプロナーゼ処理して透明帯を消失させ、その後10µM EDTA添加PBS(-)を用いて個々の割球に分離し、各割球の蛍光を観察した。【結果】ICSI法とPN法により作製した胚の発生率およびGFP発現率は、それぞれ61.5%(59⁄96)対90.6%(116⁄121),(P<0.01)および47.9%(46⁄96)対36.7%(47⁄121)であった。ICSI法で得られた蛍光陽性胚の中で、モザイク胚の占める割合は25.0%(5⁄20)であり、PN法78.9%(15⁄19,P<0.01)に比べて有意に低かった。またICSI法で得られた蛍光陽性胚では、その大半の割球が蛍光陽性を示したのに対し(81.0%,124⁄153) 、PN法では有意に低く56.6%(168⁄297,P<0.01)にとどまった。以上から、ICSI法による遺伝子導入では、モザイク胚が生じにくい事が示された。同時にICSI法により作製された蛍光陽性桑実胚では、高い割合の構成割球が導入遺伝子陽性となることが認められた。
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© 2005 日本繁殖生物学会
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