日本繁殖生物学会 講演要旨集
第98回日本繁殖生物学会大会
セッションID: 115
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生殖工学
PEP-PCRを利用したウシ体外受精由来胚の性別と腎尿細管形成不全症(CL-16欠損症)の診断
*富永 敬一郎岩木 史之柴谷 増博
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抄録
【目的】ウシ体外受精7日目胚盤胞を切断して得られた少量のサンプルからDNAを抽出後,primer extension preamplification(PEP)-PCR法でゲノム全領域DNAを増幅し,次に,特異的DNAを増幅して性別と赤血球膜蛋白異常症(バンド3欠損症)との診断が可能であることを報告した(日本畜産学会, 2004)。今回は,性別と腎尿細管形成不全症(CL-16欠損症)の診断を行い,バンド3欠損症との3項目診断の可能性についても検討した。【方法】CL-16欠損症をヘテロで保因する雄牛の精液と卵巣由来卵子(フリー)とを体外受精した高品質の7日目胚盤胞を試験に供した。切断刃で胚の 1/5から 1/3切断し,サンプルを洗浄後,10µl水中のサンプルを95°C,5分間熱処理してDNAを抽出した,15 merランダムプライマー(OPERON)を用いたPEP-PCR法(繁殖生物学会,2003)によりDNAを増幅した。性をXYセレクター(伊藤ハム)で判定し,並行して,Hiranoら (2000) の検査法でCL-16欠損症の保因の有無を診断した。サンプリング胚をゲル・ローディング・チップガラス化保存法(Tominaga and Hamada, 2001)を用いて8日間超低温保存した1個のOPU由来胚を受胚牛に移植した。バンド3欠損症についてはヘテロで保因するウシの精液あるいは卵子を用い,遺伝子型検査法(Inaba et al. 1996)で診断した。【結果】2種類の診断が82個の胚の内80個(97.6%)の胚で可能であり,CL-16欠損症のヘテロ保因:フリーの比率及び雄:雌の比率はともに39:41であり,ほぼ1:1であった。雌でCL-16欠損症フリーと診断した胚の移植により,判定どおりの子牛が誕生した。また,バンド3欠損症との3項目診断も可能であった。以上のことから,PEP-PCR法の応用により,多項目のDNA情報が判明した胚を利用できることが明らかになった。
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© 2005 日本繁殖生物学会
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