日本繁殖生物学会 講演要旨集
第98回日本繁殖生物学会大会
セッションID: 128
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生殖細胞
マウスES細胞における遺伝子強制発現による新規ホメオティック遺伝子Egam-1ファミリーの機能解析
*阿部 一仲澤 誠人齊藤 耕一春日 和小林 正之小嶋 郁夫
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抄録
【目的】マウスにおける“最初の細胞分化”は,受精後3日目の桑実胚で開始するが,その分子機構は殆ど解明されていない。我々は,“最初の細胞分化”に関連すると推定される遺伝子群を探索し,機能不明の新規ホメオティック遺伝子Egam-1 ファミリー(Egam-1, Egam-1N,Egam-1C)を同定した。本研究では,マウスES細胞におけるEgam-1 ファミリーの強制発現により,未分化状態維持及び細胞分化への関与について検討した。【方法】まず,ES細胞におけるEgam-1 ファミリーの発現解析を行った。未分化細胞または分化誘導細胞(LIF非添加培養(-LIF)またはレチノイン酸添加培養(+RA))からtotal RNAを回収し,RT-PCR法によりEgam-1 ファミリーの発現解析を行った。次に,Egam-1 ファミリーがES細胞の未分化状態を維持する可能性,及び細胞分化を誘導する可能性を検討するために,Egam-1ファミリー発現ベクターをES細胞へ遺伝子導入後,分化誘導(-LIFまたは+RA)し,細胞コロニーの形態変化を検討した。【結果】ES細胞におけるEgam-1 ファミリーの発現解析:Egam-1は未分化状態及び-LIFでは発現が検出されず,+RAにより発現が明確に誘導された。Egam-1Nは未分化状態及び+RAで発現が検出され,-LIFにより大きく発現が低下した。一方,Egam-1Cは未分化状態及び-LIFで同程度の発現を示し,+RAにより発現が上昇した。ES細胞におけるEgam-1 ファミリーの強制発現:Egam-1は,未分化状態維持培養にも関わらずES細胞の分化を誘導した。一方,Egam-1Nは-LIF及び+RAのどちらにおいてもES細胞の未分化状態を維持した。しかしEgam-1Cでは,ES細胞の明確な形態変化は見られなかった。以上の結果から,Egam-1はES細胞の細胞分化,Egam-1Nは未分化状態維持に関与している可能性が示された。Egam-1Cの機能は不明だが,構造上の関連性より,Egam-1またはEgam-1Nの機能発現に影響を及ぼしている可能性が考えられる。
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© 2005 日本繁殖生物学会
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