抄録
【目的】本研究は2種類のBSA(Fraction-V及びFatty acid free)がブタ精子の運動性と先体反応に及ぼす影響について調べた。哺乳類の精子のリン脂質には多くの脂肪酸が含まれている。 ブタ精子中の脂肪酸の減少は、精子の運動性の低下に係わっている。さらに、精子の先体反応にも影響を及ぼしていると考えられる。そこで本研究では、Fraction-VもしくはFatty acid free BSAをブタ精子に添加して、精子の運動性及び先体反応について比較検討した。また、精子の代謝活性への影響を調べた。【方法】Fraction-VもしくはFatty acid free BSAを添加したmTALPを培養液とし、各培養液に精子を加えて遠心分離し、 洗浄した後、 swim-up し、精子を前培養した。処理した精子は6時間培養し、運動性を1時間毎に観察した。Triple-stainingを用いて精子を染色・観察し先体反応率を調べた。また、14C-glucoseを用いて、精子への取り込みと酸化について調べた。取り込みと酸化の測定はscintillation counterで行なった。5%PCAを用いて精子を洗浄した後、Glucoseの取り込み量を測定した。精子によるCの酸化を調べるために、NaOHでCO2をトラップ後、scintillation cocktailに混合して測定した。【結果】 ブタ精子の運動性と先体反応、ならびにglucoseの取り込みと酸化は Fraction-V BSA添加区で有意に高まった。これらのことから脂肪酸がglucoseの代謝を高め、精子の運動性及び先体反応に影響を及ぼしていることが判った。