日本繁殖生物学会 講演要旨集
第98回日本繁殖生物学会大会
セッションID: 95
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生殖工学
凍結乾燥精子によるラット卵子のICSIに関する研究
*李 庚本丸山 仁子丹羽 晧二
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抄録

【目的】マウスとウサギおよびラットにおいて、それぞれ長期間および二日間保存された凍結乾燥精子によるICSI胚から正常な産子が得られている。本研究では、凍結乾燥精子によるICSIラット卵子の初期発生におよぼす活性化処理と凍結乾燥精子の保存期間の影響について検討した。【方法】過排卵処理を施した21-25日令のウィスタ−系雌ラットから卵子を回収し、ヒアルロニダーゼ処理により卵丘細胞を除去した。一方、成熟雄ラットの精巣上体尾から回収した精子を遠心洗浄後、EGTA-Tris緩衝液に再浮遊させ、100 µlづつ2 ml容量のガラスびんに分注し、凍結乾燥(4時間)した。乾燥後ガラスびんにゴム栓を装着し、窒素ガスを注入した後、パラフィルムで密封し、4˚Cで1-24週間保存した。その後、再水和させた試料を超音波処理し、尾部から分離した精子頭部を0.1% PVAおよび5 µg/ml サイトカラシン Bを添加したHepes-mKRB内で卵子にICSIした。ついで、1.25 mM Sr(20分間)あるいは1 kV/cmの直流電気パルス(100 µsec)+ 2 mM DMAP(4時間)(ES+DMAP)で活性化処理後、ICSI卵子をmKRBで培養し、注入9-12時間後に活性化率を調べた。また、注入10時間後に卵子をmR1ECMに移し、計120時間に至るまで培養を継続して各段階の発生率を調べた。【結果】1週間保存試料を用いて、ICSI後活性化処理を行なわなかった卵子では、約56%が活性化され、培養96時間後に約8%が桑実胚にまで発生したが、胚盤胞(培養120時間)は得られなかった。しかし、Sr処理により、約14%のICSI卵子が胚盤胞にまで発生し、その割合いはES+DMAP処理により有意に増加した(約31%)。この割合いは、非凍結乾燥精子を用いた場合の割合い(約47%)と比較して有意に低かったが、24週間に至るまで保存した凍結乾燥精子を用いても低下することはなかった(約24-30%)。

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© 2005 日本繁殖生物学会
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