日本繁殖生物学会 講演要旨集
第98回日本繁殖生物学会大会
セッションID: 96
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生殖工学
ICSIおよびROSIによるC57BL/6Jオスマウスからの胎子作出
*武田 知仁外丸 祐介江藤 智生上迫 努保谷 奈那子日置 恭司伊藤 守
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抄録

目的:顕微授精技術は、実験動物学の分野においても不妊治療や早期死亡個体からの産子の獲得など、利用価値の高い技術である。しかし、本技術の検討は、交雑系を用いて行われ、広く一般的に用いられている近交系では比較的少ない。今回、我々は近交系オスマウスの生殖細胞を用いた胎子作出を検討したので報告する。
材料および方法:オスマウスには3-7週齢(試験区1)および11-19週齢(試験区2)のC57BL/6Jを用いた。精子は精巣上体尾部より、円形精子細胞は精巣より採取した。メスマウスには8-15週齢のC57BL/6JまたB6D2F1を用いた。未受精卵は過排卵処理後に卵管膨大部より採取し、卵丘細胞を除去したものを用いた。ICSIはKimuraら(1995)の方法に準じて行った。ROSIはOguraら(1999)の方法に準じて行い、10mM塩化ストロンチウム60分(A区)および2.5mM塩化ストロンチウム20分処置(B区)と7%エタノール7分処置(C区)の3区で卵子活性化法を検討した。生殖細胞注入後に前核形成の確認を行い、翌日に得られた2細胞期胚をレシピエントマウス卵管内に移植した。移植後18日目程度で着床状況の観察を行い、胎子作出効率を算出した。
結果および考察:ICSIでは供試卵数に対し試験区1および試験区2で35.3%、14.7%(C57BL/6J区)、および20.7%、16.0%(B6D2F1区)が胎子へ発生した。ROSIでは供試卵数に対し試験区1および試験区2で活性化A区で3.5%、6.2%、B区で5.8%、12.8%、C区で23.5%、10.9%が胎子へ発生した。以上の結果、すなわちオス個体の週齢に関わらず、さらにICSIおよびROSIに関わらず今回実施した全ての区において胎子が得られたことから、近交系オスマウスを用いた場合でも顕微授精技術を利用することにより、胎子が得られることが明らかとなった。今後は胎子作出効率をより向上させることが課題であると考えられる。

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© 2005 日本繁殖生物学会
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