地域漁業研究
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論文
養殖マグロの輸入・販売ビジネスを巡る競争と対応
大手主導の競争条件の強まりと中小業者の業務再編に着目して
山本 尚俊
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ジャーナル オープンアクセス

2007 年 47 巻 2-3 号 p. 1-18

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抄録

本稿では,中小業者の業務・対応行動を切り口に,養殖マグロ・ピジネスを巡る競争・再編過程の特質について検討した。

養殖マグロの輸入は,最近10年程で48倍に増え,2005年は 35,700トンに達した。この過程で,養殖マグロ・ビジネスに関する競争ステージは著しく変化する。 1990年代半ば以降,商社等が輸入ビジネスに本格的に参入し,中小業者は取扱シェアの縮小を強いられる。しかし中小業者はブローカー業務(生産者と輸入業者との取次ぎ業務)に活路を見出すことで,存立範囲を確保できた。しかし 2000年代以降,商社等が輸入・国内販売シェアの獲得を狙って,生産者との直接取引に乗り出す。中小業者は業務縮小を強いられ,大手主導による寡占的な構図が強まる。

こうした競争ステージのシフトを,D社の業務変容や対応行動に照らし検討した。同社の生き残り対応の特徴は次の通りである。(1)生産段階への垂直統合(合弁)の推進である。これは,輸入量の拡大に加え,他社に対する競争力の確保を狙ったものである。 (2)さらに上記が,取引コストの削減や販売対応の強化をも前提に垂直的マーケテイングシステムの構築という形で進むことである。

これらを踏まえ,結論では水平的な競争が垂直的な連携や企業聞の関係変化を促す点というに,養殖マグロ・ビジネスを巡る競争・再編の今日的特徴があることを指摘した。

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© 2007 地域漁業学会
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