地域漁業研究
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論文
中国江蘇省における淡水養殖魚介類の流通システム
水産物流通の展開と「部分市場」の形成
陳 棟燕常 清秀
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ジャーナル オープンアクセス

2010 年 51 巻 1 号 p. 65-86

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抄録

今日,中国は,経済発展に伴う所得の上昇によって,伝統的に食べる習慣がある淡水魚介類の消費も多様化,高級化が進んできた。こうして,しだいに成長していく消費需要に対応するため,淡水魚介類の流通システムも大きな変化が生まれている。

本稿で取りあげた蘇州市においては,「四大家魚」のような一般淡水魚介類の場合,卸売業者による流通が中心である。このような卸売業者は,かつて養殖生産者であったが,卸売市場の設立により,かつての人的なつながりの強い養殖業者を組織化し,次第に販売を専門とする商人となり,卸売業に専念するようになった。

また,淡水魚介類の消費の拡大によって,小売業者が販売規模を拡大し,それぞれの需要に対応するために,彼らが二次卸売業者となった。こうした商業分化により,淡水魚介類の迅速な流通と販売リスクを分散させるための効率的な流通システムが形成された。

一方,エビ,カニのような高級水産物に関しては,市場内の専門卸売業者によって取り扱われるようになった。とくにエビの場合,全国的な集荷ネットワークを持ち,販売においても全国的なネットワーク網で販売を行っている大規模な出荷業者も出現するようになった。

このように,淡水養殖魚介類の流通は,市場経済の拡大とともに,大衆魚と,エビ類・カニ類の奢侈的高級魚介などの商品的性格ごとの「部分市場化」が進展し,そうした「部分市場」を担う多様な流通主体から構成される重層的な流通組織となってきている。

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© 2010 地域漁業学会
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