地域漁業研究
Online ISSN : 2435-712X
Print ISSN : 1342-7857
研究ノート
漁協女性部による学校給食への水産加工品販売の条件
八丈島を事例として
村上 陽子佐藤 尚紀
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2012 年 52 巻 2 号 p. 85-105

詳細
抄録

わが国の沿岸漁業は漁獲量の低下や魚価の低迷が続き,漁業経営の安定を図るために漁協女性部等による様々な取組みが活発化している。八丈島漁協女性部では有志が「おさかな研究会」を立ち上げ,漁獲物を学校給食用に加工し,大きな成果をあげている。本稿では,女性部グループが水産加工品の販売に至った経緯や活動の実態を明らかにし,その意義や課題について考察した。

成功要因を整理すると次のごとくである。①八丈島には学校給食のニーズに適した漁業資源があった。②学校における食育や地産地消の推進という地方自治体の施策があった。③八丈島が属す東京都では多くの小中学校で,単独献立・単独購入方式を採用しており,小ロットの地場産物を利用しやすい仕組みとなっていた。④行政の適切な支援を受け,多様な給食流通業者と連携し,学校給食への販路を開拓したことである。

一方,おさかな研究会が行う加工販売活動や食育活動は,八丈産水産物の消費拡大とともに,地元に雇用の場を創出する等,地域の活性化にも繋がっている。今後の課題としては後継者の育成に加え,適正な在庫管理や価格設定を求める給食流通業者との信頼関係を深め,安定供給を維持していくことがあげられる。

著者関連情報
© 2012 地域漁業学会
前の記事
feedback
Top