地域漁業研究
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Print ISSN : 1342-7857
論文
LED集魚灯の導入がタンガニイカ湖のダガー漁にもたらす効果と課題
漁船の操業収支の分析をもとに
藤本 麻里子
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ジャーナル オープンアクセス

2014 年 55 巻 1 号 p. 1-19

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抄録

タンガニイカ湖におけるダガー漁では,半世紀以上もの間,集魚灯として灯油ランプが用いられてきた。ダガーの漁獲量は減少傾向にある一方,漁業従事者の数は増加しており,漁業者の生計は厳しい現状がある。近年の石油価格高騰により,燃油代に加えて,灯油ランプの燃料費がダガー漁船の経営を圧迫している。2013年2月,タンガニイカ湖のダガー漁の中心地であるタンザニアのキゴマ市において,集魚灯にLEDが初めて導入された。

本稿は,LEDが導入されて最初の半年間のダガー漁船の収支の変化を報告するものである。従来の灯油ランプで操業する漁船と,LED集魚灯で操業する漁船で,操業収支の変化を比較した。LED集魚灯を用いることで,漁船の操業収支は大幅な改善が見られた。集魚灯関連コストは大幅に削減され,LED導入コストも早期に回収可能であることがわかった。漁獲量も,LED集魚灯により増加する傾向があった。LED集魚灯は漁船の操業収支や漁業従事者の収入面ではメリットをもたらす可能性が示唆された。しかし,減少傾向にあるダガー資源にとっては,デメリットをもたらす可能性も否定できない。LED集魚灯の普及には,資源枯渇を招かないための,より積極的で実効性のある対策が求められている。

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© 2014 地域漁業学会
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