地域漁業研究
Online ISSN : 2435-712X
Print ISSN : 1342-7857
論文
米国アラスカ州におけるカニ漁業Coopの変遷
東村 玲子
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2014 年 55 巻 1 号 p. 21-44

詳細
抄録

米国アラスカ州のカニ漁業において,2005/2006年漁期から合理化プログラムが開始された。その中でも,効果が大きかったものとして,Coop制度の創設が挙げられる。4以上の漁業経営体によって任意に組織出来るCoopは,メンバーより付託された譲渡可能個別割当(IFQ)をプールし漁船を調整して漁獲出来ることにより採算ラインが下がること,各経営体が所持出来るIFQ上限(2%)の適用除外となること,そしてメンバー間の情報の共有化が図られるというメリットがある。これより,漁船数の減少と漁期の長期化が実現し,また効率化が緩やかに進展した。当初は最も大きなCoopでも全体のIFQの30%を付託されている状況であったが,09/10漁期にはIFQの70%を付託された巨大Coopが出現した。団体価格交渉が厳しく制限される米国において,このCoopは唯一加工業者と団体で価格交渉が行うことができ,あたかも巨大企業が出現したかの様である。13/14漁期には,このCoopのメンバー資格を有しない経営体によって新しいCoopが組織されたが,両者は密接な関係にあり,状況はあまり変わっていない。Coopが機能する条件として,標準化された漁法と船上処理が行われること,個別の漁獲物の品質によって魚価に差がないこと,漁期中の漁獲効率や漁獲物に差がないこと,団体で価格交渉を行うメリットがあることが挙げられる。

著者関連情報
© 2014 地域漁業学会
前の記事 次の記事
feedback
Top