近年,水産資源の過度利用と世界規模で水産物需要の増大が同時に進行している中で,漁業生産を維持し,水産物を安定供給するために,海面養殖に大きな期待が寄せられている。
しかし,日本国内の漁業総生産量の33%を占めている海面養殖の生産量(2013年)を世界平均レベルの5割近く(49%)までに引き上げることは可能なのか。そのためには,海面養殖の現状とその歴史的発展過程を再度確認する必要性がある。そこから今後の方向性を探り出す必要がある。
なぜならば,日本の海面養殖生産は1960年代の30万トン程度の規模から80年代後半の140万トンを超えるほど大きな発展を遂げたが,その発展過程において依然として多くの課題を抱えているからである。現段階において,少なくとも①漁業生産の漁場利用の競合問題 ②大規模経営者と小規模家族経営との地域内での共存・調整の問題 ③養殖経営主体の経営改善の問題という三つの基本的な課題が残されている。これらの本質的な問題点,あるいは課題が解決されない限り,海面養殖のさらなる発展は期待できない。
本論文は,地域マネジメントという視点から,既存研究の整理を通じて,海面養殖業が抱えている諸課題の解決の糸口を探ることを目的としている。