地域漁業研究
Online ISSN : 2435-712X
Print ISSN : 1342-7857
論文
新しい地域漁業の姿を提案する
竹ノ内 徳人山尾 政博
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 56 巻 3 号 p. 1-18

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抄録

本論文は,地域漁業学会第57回大会シンポジウム「新しい地域漁業の姿を提案する」に関して座長解題として準備したものである。本シンポジウムでは,地域漁業(水産業・漁業地域)を俯瞰・鳥瞰して幅広く捉えるとともに,水産業に関わりながら漁業地域において生活している人々・将来的に水産業に関わった生活を漁業地域でしてみたい人々といった地域コミュニティ構成員としての「生活者」の視点であらためて考えてみたい。また,新しい漁業経営の形とはいかなるものか,漁業経営に関する経営者としての人材評価のあり方,育成手法と大学の関わり,都市と漁村の交流事業がもたらす地域漁業へのインパクト,地域コミュニティにおけるエンパワーメントの出現といった,研究領域の学際性も意図している。本シンポジウムは,さまざまな問題に直面する多くの漁業地域の持続可能な存立について生活者の視点からあらためて捉えなおし,今後の水産業・漁業地域の活性化の一つの手法を提示することを目的としたい。

本論は,本シンポジウムにおける解題として以下の課題を明らかにしていく。第一に,少子高齢化・人口減少社会について白書等から社会経済に及ぼす影響について概観しながら,水産業・漁業地域への影響ならびに関連性を明らかにする。第二に,少子高齢化・人口減少社会における政策・施策の方向性と地域漁業の関係性について検討する。第三に,地域漁業研究としてのこれまでの議論を振り返りながら,シンポジウムとしての着陸地点を想定することである。新しい地域漁業の姿としては,漁業形態の新しい形と経営者の資質の双方で対応すべきであり,消費者や利害関係者との協調の中で新しい地域コミュニティを作り上げる必要があろう。これらの取り組みが,地域漁業(水産業・漁業地域)での生活者が誇りとともに心豊かに住み続けていけるような経済と社会の有り様が求められている。

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© 2016 地域漁業学会
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