地域漁業研究
Online ISSN : 2435-712X
Print ISSN : 1342-7857
論文
漁業・漁村の6次産業化に向けた経営資質と経営マインド
金融機関の融資審査における非財務項目の視点から
三宅 和彦若林 良和
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 56 巻 3 号 p. 19-38

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抄録

本研究では,愛媛県6次産業化経営者及び経営体の事例を中心に,どのような経営資質と経営マインドが求められるのか,モデル化を試みることを目的とする。具体的には,事業の方向性とターゲット顧客により,経営者及び経営体のタイプを4つに分け,金融機関が融資審査時に用いている非財務審査項目を活用し各タイプ別に自己評価を行いモデル化した。その結果,各タイプに応じた顕在的・潜在的な強みと弱みが明らかになった。強みには,経営者の人的資産を初め,ネットワーク構築力や地域融合力,商品・サービス開発力があげられ,地域貢献の情熱と地域に信頼される人柄・リーダーシップで事業展開し,加工,販売,小売等6次産業化連携パートナーとネットワーク構築していることが伺えた。一方,弱みには,組織管理能力,情報発信・受信力,販売・マーケティング力があげられ,脆弱な財務管理や法規制対応等の組織管理に危機感をもち,さらに顧客との継続した情報の受発信によって信頼と認知度を高めて販売力強化につなげていくことが喫緊の経営課題として浮かび上がった。今後の研究課題として,6次産業化経営者及び経営体の経営資質・マインドは,市場からの距離や交通インフラ等の外的環境に留まらず,地域の文化,歴史,住民気質等との内的環境にも影響され,地域特性に応じた6次産業化経営者及び経営体のタイプを精査することの必要性を指摘した。

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© 2016 地域漁業学会
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