地域漁業研究
Online ISSN : 2435-712X
Print ISSN : 1342-7857
論文
漁村再生に向けた都市漁村交流の取り組み実態と課題
岸上 光克
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 56 巻 3 号 p. 53-65

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抄録

本稿では,都市と漁村の交流事業に取り組んだ和歌山県串本町とすさみ町の事例を取り上げ,各種団体や漁業者を中心とする地域住民へのヒアリングをもとに,交流事業が漁村にもたらす効果や課題を明らかにした。

漁業経営体数の減少,漁業就業者の減少や高齢化等によって,漁村は危機的状況にある。このため漁村活性化が急務となっており,その一手法として都市と漁村の交流事業が注目されている。都市漁村交流は,大きな経済効果を実現することは困難である場合が多いとはいえ,地域漁業や地域経済を維持するうえで重要な役割を果たしている。その際には,長期的かつ持続的な取り組みという共通認識をもち,地域の多様な担い手による多様な交流事業の展開が必要であろう。交流事業の効果をみると,地域資源の掘り起こしや見直しによる経営多角化が実現していること,人的交流によって,漁業者も含めた住民が地域資源や地域漁業の見直しを図り,「漁業や漁村への誇り」を取り戻しつつあることがあげられる。

地域の実情に合わせた多様な交流事業に取り組むことによって,漁業者だけでなく地域住民が地域漁業や漁村を再評価し,漁業者の生産活動へのモチベーションの維持と向上にもつながる。

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© 2016 地域漁業学会
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