地域漁業研究
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論文
東アジアの経済発展と水産食品企業の行動
加藤 辰夫東村 玲子
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ジャーナル オープンアクセス

2017 年 57 巻 2 号 p. 77-91

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抄録

東南アジアの経済発展は,アジアグローバル型と呼べるような,極めて開放的な発展を特徴としている。発展のために必要な基礎的条件は,資源,マーケット,資本や技術,インフラである。資源の豊富な国が少ないため外国企業のための経済特区または工業団地を整備し,第二に製品のマーケットは輸出中心で,第三に政策的に外国資本を導入し,第四に国際支援によるインフラ整備を進めること,である。これらの条件整備により急速な発展が可能になっている。

発展段階が異なる多様な国が共存する東南アジアにおいて,先進国が中心になってインフラ整備や投資をする関係だけでなく,とくに中国やタイなどの先発発展途上国から他の後発途上国へのインフラ整備や投資が拡大している。後発発展途上国におけるグローバル食品企業は労働集約的な技術を使いつつ先進国への輸出をめざしているが,すでに中進国に到達したタイや中国のグローバル食品企業では,技術の高度化を前提に内需の拡大による国内需要へ対応し,水産食品に関しては高品質な冷蔵冷凍商品の国内向販売を拡大している。

東アジアにおける域内貿易の高さや中間財貿易の拡大などの傾向は,とくに先発途上国における基幹産業での産業集積の進展を示しているが,水産食品企業の場合は,後発途上国では資源依存的かつ労働集約的に輸出向け製品を製造するグローバル食品企業があり,先発途上国では資本集約的な技術を前提として国内外の市場の量的質的変化に対応するなど,多様な展開をしている。

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© 2017 地域漁業学会
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