2020 年 60 巻 2 号 p. 109-119
ベトナムのエビ養殖は1970年代から1990年代にかけて劇的な増加を遂げてきた。メコンデルタがその中心であり、養殖面積は全国の91%、生産量は80%を占めている。ここでのエビ養殖は、大きく粗放型、集約型及び統合型養殖に分けられる。既存の粗放的、集約型養殖は魚病リスクが大きく、零細漁家が大部分を占める当該地域においてエビ養殖の持続可能な発展を保証するものではない。一方、統合型養殖は、こうした問題を改善するものとして期待されている。そこで本研究では、2次資料および現地調査に基づき、統合型養殖の特徴とその利点を明らかにする。研究の結果、統合型養殖はマングローブや米などの生産と組み合わせることで環境悪化リスクを減らしながら、養殖経営を持続させていることが明らかになった。また既存の養殖形態に比べ低投資であり、魚病リスクが低く、多角的な収入を得ることも可能である。さらにマングローブとの統合型養殖では、マングローブ林の回復にも効果が期待されている。他方、オーガニックシュリンプとして市場からも高く評価されており、多くの利点があることが明らかになった。