中国黄土高原では退耕還林政策を利用して様々なバイオマス生産事業が行われているが,環境改善効果と社会経済的効果のポテンシャルによって事業の有効性と持続可能性を評価した.河南省霊宝市を対象地域とし,退耕還林転換後のトチュウ(雄花茶,トランスゴム,BDF),リンゴ(生食,濃縮果汁),ハリエンジュ(丸太)と転換前のトウモロコシのバイオマス生産・利用ケースについて,水土保全効果,低炭素化効果,事業収支,農民雇用・収入を比較した.トチュウ事業は環境改善便益が最大であったが,事業利益は高くなかった.生食用リンゴ事業は環境・経済両面で優れるが,転換可能な土地は限られる.ハリエンジュ林は事業収支が悪く,事業の持続性に劣った.バイオマス加工を伴う事業では,農民の雇用創出と農民の事業参加・利益還元のしくみが必要である.また環境改善便益を経済利益に転換できれば,事業の経済性と持続可能性を改善できるであろう.