2011 年 40 巻 3 号 p. 167-173
本報は,使用済み塩ビ製品のリサイクルのあるべき姿を追究するための効用評価方法を提案するものである.塩ビ樹脂製壁紙,床材などの焼却・熱回収の是非について,著者らが以前に提出した「社会エネルギー消費量」概念を用いて説明できることを示した(本文3.).また,地中に埋設されている塩ビ管などを掘り返して回収し,リサイクルすべきかどうかについて,その効用評価は,「社会エネルギー消費量」概念を拡張して行えることを示した(本文2.).従来の投入エネルギー基準の評価法では,経済性に強く影響する人件費に比例する労働のエネルギーが無視されるため,経済性に基づく評価結果と相反することが多かった.本報では,この矛盾を解決しリサイクルの効用を定量的に評価する手法として,労働力(人件費)をエネルギー量に換算して加える方法を提案する.その具体例として,地中埋設の使用済み塩ビ管・継手を掘り出してリサイクルすることの効用を,解析・評価した試算例を示す.